ANEST IWATA Racing with Arnageは、12月7日(土)から8日(日)にかけて、鈴鹿サーキット(三重県)で開催された2024 SUPER GT 第5戦「SUZUKA GT 300KM RACE GRAND FINAL」のGT300クラスに参戦した。このレースは当初は8月に開催が予定されていたが、台風の影響で順延となり、シリーズ最終大会として行われた。この大会では規則により、サクセスウェイトがリセットされ、全車0kgでの戦いが繰り広げられた。ANEST IWATA Racing with Arnageの体制は従来通りAドライバーにイゴール・フラガ、Bドライバーに古谷悠河、車両はANEST IWATA Racing RC F GT3で臨んだ。
■公式予選
シリーズ終盤戦は天候に恵まれなかったが、鈴鹿サーキットは快晴に恵まれ、絶好のコンディションとなった。チームはシミュレータによる解析など前準備を整えていた。
7日(土)の午前9時15分から公式練習が始まり、イゴール・フラガがステアリングを握りコースインした。気温が低下して空気密度が高まるとことでダウンフォースが増えると予想したチームは車高を高めに設定したが、車体が跳ねる問題が発生。ピットインを繰り返して車高を徐々に落とす方向でセッティングの調整を進める。
セッション後半は古谷が担当し、イゴール同様に公式予選に向けてのセッティングを続けた。GT300クラス専有セッションでは、イゴールが予選シミュレーションを行ったが、コース上に停止車両が現れたことで赤旗が出され、タイム更新できなかった。ANEST IWATA Racing RC F GT3のタイムは1分58秒284、トップから2秒521おくれのクラス18番手に終わる。
午後の公式予選もドライコンディションで実施された。GT300では全車が出走するQ1セッションで上位14台がUPPER14、下位13台がLOWER15に分けられ、Q2セッションで再度タイムアタックを行う形式で行われた。Q2セッションでは、それぞれのグループで改めてタイムアタックを行い、Q1とQ2で記録したタイムの合算でグループ別の順位を決め、UPPER14の後にLOWER15を並べる形でスターティンググリッドが決まる。
午後2時13分からのQ1セッションにはイゴールが出走。低温に備えてタイヤのウォームアップを入念に行った後タイムアタックを行い、1分57秒063を記録。一時出走27台中6番手につけたものの、その後順位を下げて16番手でセッションを終え、UPPERグループに入ることはできなかった。
午後3時11分からのQ2セッションには古谷が出走した。Q1セッションの状況を考慮し、チームはさらにセッティングを調整し古谷をコースに送り出す。Q1とQ2のインターバルに行ったセッティング調整によりANEST IWATA Racing RC F GT3の操縦性は更に改善され、古谷は1分56秒312を記録。出走13台中2番手でQ2セッションを終えたため、決勝レースのスターティンググリッドは16番手となった。
■決勝レース
8日(日)の空に薄い雲が広がり、気温と路面温度がさらに低下した。決勝前のウォームアップ走行でイゴールは27台中11位となるタイムを記録し、マシンのパフォーマンスが向上していることを確認した。
この日、チームはリスクを取った作戦を実行した。低温コンディションの中で16位からスタートすることを考慮し、ドライバー交代の際はタイヤ交換をせずスタートからフィニッシュまで走りきるというものだ。タイヤに対する負荷が増える一方で、タイヤ交換作業のロスタイム、低温下でタイヤのウォームアップをやり直すロスタイムを削減し、ポイント獲得圏内まで順位を上げるための思い切った決断だ。
午後12時50分、スタートは古谷が担当した。上位の1台がペナルティによりグリッド降格処分を受けたため、15位からレースを開始した。7周目、9周目に上位車両がレースから脱落したため、古谷は13番手に順位を上げたもののここでフルコースイエロー(FCY)が宣言されスロー走行が義務づけられる。この影響でタイヤの温度が低下し、レースが再開された後も古谷のペースは上がらなかった。後続車両に詰め寄られることになるものの、古谷はポジションを守り、16周を走ってドライバー交代のためピットへ戻る。
ここでチームは作戦通りドライバー交代と給油のみ行い、イゴールをコースへ送り返した。タイヤを交換しなかったものの、ピットストップの間にタイヤの温度が冷えてしまい、コースに出たイゴールのペースはなかなか上がらなかった。しかし、徐々にタイヤが温まるとペースも上がり、コース上で前走車をオーバーテイク。22周目には12番手へ順位を上げた。
ところが、31周目にFCYが宣言され、ここでタイヤが冷えてしまう。再びイゴールのペースは落ち、32周目にはポジションを13番手に落とすこととなる。この頃から、スタートから使っているタイヤの消耗が進んでさらにペースが上がらなくなり、イゴールは34周目には15番手、38周目には16番手へと後退を余儀なくされた。
40周目、消耗の進んだ右リヤタイヤのトレッドゴムが剥離、走行続行が不可能になったためイゴールは緊急ピットイン。ピットでタイヤを交換してコースに復帰したものの、順位は大きく落ちてしまい、最終的にはトップから1周遅れ、クラス21位でレースを終えた。3レースぶりで完走ポイントを3点獲得、2024年シーズン通算12点としてチームランキングを同点22位となった。
■正式結果
公式予選:クラス16位(参加27台)
Q1:1分57秒063(イゴール)
Q2:1分56秒312(古谷)
決勝:クラス21位(出走27台)、46周(1周遅れ)
■コメント
Aドライバー:イゴール・オオムラ・フラガ
「予選では車高が高めだったためクルマが跳ね、ギリギリでQ2に進めませんでした。でもその後セッティングが進んで良い感じになり、決勝朝のウォームアップは悪くなかったので、作戦と展開次第ではトップ10に届くのではないかという手応えはありました。タイヤ無交換作戦は、レース後半厳しくなると予想していましたが、クルマを古谷選手から引き継いだ段階でペースが上がらず苦しいレースになりました。それでもなんとか最後まで引っぱろうと思っていましたが、40周目の130R立ち上がりで右側のリヤタイヤから異音がしてクルマの挙動も不安定になったので、瞬時にピットに入りますと伝えてピットに入りました。ピットロード入り口に近かったので場所的にはラッキーでした。今回のレースは、正直なところもっと上位に行けるだけのポテンシャルがあったと思うので残念です。今年は色々なことが起きて大変でした。去年はポイントを2回獲れ、今年は表彰台を狙っていたんですが、表彰台どころかノーポイントに終わってしまい、すごく悔しいです」
Bドライバー:古谷悠河
「Q2は、僕としては久しぶりに新品タイヤでドライ路面を走ったので、こんなにグリップするんだっけと驚きましたが、アタックはなんとかうまくまとめられたと思っています。練習走行からイゴールと少しずつ車を改善していって、ようやく良いところに落ち着いたのかなという感触でした。決勝前のウォームアップを走り始めたらブレーキの感触に少し良くないところがあったので、スタートまでに変えてもらって、決勝では問題なく走れました。スタートは可もなく不可もなく、ポジションも上がらず下がらずでした。FCYが入って1回タイヤの温度が下がると、レースが再開されてからグリップがなかなか戻らずペースが下がってしまいました。そのあたりが今回のレースで難しいところでした。なんとかポジションをキープしてイゴールに引き継ぎました。今シーズンは色々とあってポイントが獲れず、とても悔しいんですが、僕個人的には去年も含めて2年間このチームでお世話になって、たくさん勉強させてもらいドライバーとして大きく成長できた2年間でした」